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既製品レンズとカスタムレンズ、どう選ぶべきか?

光学レンズを使おうと考えるとき、「種類も価格も多種多様で、どれを選んだらいいか分からない」と思われている方も多いのではないでしょうか?

スーツに既製品とオーダーメイドがあるように、レンズも既製品レンズとカスタムレンズがあります。
本コラムではこの2種類のレンズの特徴を紹介し、皆様のニーズに合うレンズを選ぶ時のポイントを説明します。

 

 

 

 

1. レンズの種類

 

○既製品レンズ

ウェブサイトやカタログにある、既に完成した状態で売られているレンズのことを指します。

【メリット】
・カタログ等から簡単に探せて、すぐに購入できる
・1個からでも購入できる
・ラインアップが豊富であり、様々な仕様のレンズを試したい場合には最適
・金型、治具、評価機等のイニシャル投資は不要

【デメリット】
・本当に欲しい要求仕様にマッチするものがない場合がある
・購入数量が多くなっても、単価のコストメリット幅が少ない
・誰でも購入できるため、ハード面で差別化ができない
・仕様を変更することはできない

○カスタムレンズ

購入者が求めるレンズの光学性能や仕様をもとに作る、オーダーメイドのレンズのことです。

【メリット】
オーダーメイドのものである
・欲しい要求仕様を満たせる
・製作途中で仕様変更も可能
    (ただし、製作段階において追加費用がかかる場合がある)
・購入数量が多いと、単価のコストメリットが出しやすい
・具体的な仕様がなくても、製品コンセプト検討段階から一緒に作り上げることができる
   

【デメリット】
・時間がかかる
・金型、治具、評価機等のイニシャル費用がかかる
・要求仕様を提示しないといけない
・光学知識がないと何に気を付ければ良いか、何をポイントにレンズを製作すれば良いかわからない
   

 

○既製品レンズとカスタムレンズ比較まとめ

どんなレンズを、いつまでに、いくつ欲しいのか」という要素がレンズを選ぶ際の判断基準になります。従いまして、
上述の説明を押さえることが失敗しないレンズ選定のポイントの1つとなります。

 

2. 事例紹介

○事例①

【背景】
既製品を購入していたお客様から「購入単価を下げたい」というニーズがあり、カスタムレンズであれば単価が下がる
のか?検討依頼があり、カスタムレンズをご提案した事例です。

 

【案件概要】
・数量:50台/月
・製品販売期間:10年(120カ月)
・設計仕様:ガラスのレンズユニット、製品仕様は既製品と同様

 

図表1 既製品とカスタム提案の比較

【結果】
既製品レンズの単価よりカスタムレンズの単価が高く、お客様にとってメリットがありませんでした。

 

【解説】
「1.レンズの種類」で紹介したように、カスタムレンズ製作では金型・レンズ治工具などでイニシャル費がかかる上、
数量規模が小さいと既製品レンズより部品単価を安くすることは難しいです。この数量条件においてコスト面のみで比較
した場合、メリットは出ません。

図表2 カスタムレンズと既製品レンズのコスト比較

ただし、図表1で示す通りカスタムレンズ製作では数量が多くなれば部品単価が下がるため、コスト重視でカスタムレン
ズを依頼する際は、複数の数量条件を提示いただくことをおすすめします。

 

〇事例②

【背景】
既製品を購入していたお客様から「部品単価・光学性能を維持したまま製品サイズを小型化したい」というニーズがあり、
カスタムレンズであればこのニーズを実現できるか?検討依頼があり、ご提案した事例です。

【案件概要】
数量:1,000台/月
・製品販売期間:5年(60カ月)
・設計仕様:レンズユニットの光学性能が維持できるなら形状やサイズの設計は自由
                                 

図表3 レンズ小型化イメージ

【結果】
トヨテックにて現行品の解析を行い、レンズの再設計を行った結果、部品単価・光学性能を維持したまま小型化が可能で
したので、お客様のニーズを達成することができました。

 

【解説】
事例①と異なり、良い結果が出た理由としては2つあります。1つは数量条件が比較的多かったため、もう1つは開発構
想段階からお客様と協同で進められたためです。

 

3. 失敗しないカスタムレンズづくりのポイント

 

前項の事例②のように、カスタムレンズを選択してメリットが出る場合もありますが、失敗しないカスタムレンズを作るうえ
では、単純にニーズを伝えるだけでは上手くいかない可能性があります。要求仕様通りにレンズ製作を進めたものの、レンズ
の試作・量産直前段階で不具合が起きてしまった事例もあります。

 

レンズづくりは様々な要素が複雑に絡み合う為、こういった事例を防ぐにはお互いに以下のポイントを押さえながら会話を重
ねることが重要となります。

 

・要求仕様の提示不備がないかを確認する
・最終製品が使用される環境を可能な限り開示いただく
・最終製品のイメージを具体的に共有いただく

 

レンズの開発プロセスは最終製品のコンセプト・アイデア出しから始まり、製品仕様へ落とし込み、その仕様を満たす光学設
計と構造設計、製図、という流れで進みます。特に初期の開発プロセス段階において最終製品のイメージや部品の要求仕様を
可能な限り開示して頂けることで、お客様のニーズを上回るご提案やアドバイスができるケースもあります。

※光学設計…光学仕様を満たす設計
※構造設計…レンズを保持するホルダー等の具体的な設計

また、カスタムレンズの開発プロセスにおいて、お客様と私たちメーカーの役割分担を明確にする必要があります。当社の経
験上、以下のようなパターンが考えられ、どのパターンにおいても、上記で記載した失敗しないカスタムレンズづくりのポイ
ントは変わりません。

 

図表4 カスタムレンズの開発プロセス

ただし、光学レンズと構造部品を別々で調達する場合は注意が必要です。構造設計にも漏光や迷光対策、嵌合によるレンズ面
への圧力影響、レンズの傾きなど光学仕様に影響する要素が多く、構造部品を設計・製造するメーカーにも光学知識が要求さ
れます。この点を考慮せずメーカー選定を行うことも、試作・量産直前での不具合につながる可能性があります。光学レンズ
と構造部品を別々で調達する場合は、構造部品メーカーの光学知識レベルを考慮することも失敗しないポイントの一つです。

 

4. 失敗しないレンズの選定ポイント

 

最後に、ここまでの内容を「失敗しないレンズの選定ポイント」としてまとめました。

 

既製品レンズのラインアップを確認し、要求仕様に合致するレンズが存在するか確認する。
➁既製品レンズが存在しない、または要求仕様を満たしているものがなければ、カスタムレンズメーカーに相談する。
➂要求仕様を提示し、最終製品のイメージを可能な限りカスタムレンズメーカーへ共有する。
➃各メーカーがどこまで対応できるか会話を重ね、発注先の判断を行う。

先述した構造部品の設計・製造が出来るかという点に加え、金型・治工具の製作や、汎用の光学測定機器で評価でき
ない要素が発生した際に専用の評価機を設計・製造できるか、という点が判断を行う際のポイントとなります。

 

5. カスタムレンズならトヨテックで!

 

「1.レンズの種類」でご紹介したように、カスタムレンズにはメリット・デメリットがあります。トヨテックでは経験とノ
ウハウを生かし、お客様のニーズに合うカスタムレンズをご提案します。カスタムレンズが初めての方でも、仕様決めから経
験豊富な光学設計者、機構設計者とセールスエンジニアがご相談にのります。

 

光学設計技術ナビを運営する株式会社トヨテックでは、オプトメカトロニクスの総合光学メーカーとして、お客様のニーズに
合わせてゼロから設計開発を行い、製品化までを一貫サポートしております。カスタムレンズの製造はもちろんのこと、レン
ズ製作に必要な金型・治工具製作、システムや周辺部品も含めたレンズユニットの設計・組立、そして専用評価機の設計・製
造まで、ワンストップで対応いたします。

 

「こんな製品が欲しいんだけど…」「レンズでこんなことってできるの…?」を実現するのが、光学設計のプロの集団である
光学設計技術ナビです。光学設計にお悩みの方は、光学設計技術ナビまでお気楽にご相談ください。

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